ドイツに滞在する日本の皆さん
ドイツで会社を経営されている日本の皆さん
そしてドイツで従業員としてお仕事される日本の皆さんへ
世界中どこでも、現在新型コロナウイルス(正式名称:COVID-19)の影響でかなりのダメージを受けています。正直私も最初これほど大変なことになると思いませんでした。
遠くで「中国は今大変だな」くらいの認識でしたが、もっと早く気づけば、勉強すればよかったですね。私も家族と今離れて、再会はコロナウイルスの影響で台無しになりました。何かしらの形で世界中の方々が恐怖、不安、嫌な思いに襲われています。
悩まれるのは皆さん一緒ですし、しょうがないことになってしまってますが、弁護士の観点から、ドイツにおける労働や会社の運営に関する法律のアドバイスを、現在分かる限り共有させていただきます。
より詳しく相談をしたい方は、以下連絡先より私宛にご連絡ください。
- Roman Koudous(ロマン・クドゥス) / 日系企業専門ドイツ弁護士
- メールアドレス:info@koudous-law.de
- Webサイト:koudous-law.com
Contents
ドイツの企業さん向けQA集
質問1:従業員に対してどのようなお知らせしないといけないですか?
ドイツでは労働の基本となる、会社から従業員に対する「安全配慮義務」というものがあります。その安全配慮義務によって、従業員に様々な情報提供義務が発生します。
会社の中で特に感染者がいる疑いもない場合、コロナウイルスに関するお知らせをする義務はありません。ただし、現在毎日のようにフェイクニュースがあったり、確認するべき新たなニュースが公開されたり、非常に大きい不安があります。何も疑いがなくても、会社として包括的に「コロナウイルス対策」というお知らせ、例えばメールで従業員皆さんにすることをおすすめします。
私も個人としての弁護士業務以外にも、企業内の弁護士で従業員でもあり、我々も従業員(私を含め)全員に会社としてどういった対策を取っているか、今度コロナウイルスの影響でダメージが発生するのか、大体の状況について知らせました。保健所の問い合わせやコロナウイルスに関する一般的な情報も含めて従業員に説明してください。
このカオスの中でこそ安心させるのが会社の「安全配慮義務」になります。
なお、感染者が確かにいる場合従業員に知らせる義務が発生し、だれが感染されたかも含めます。個人情報ではありますが、誰が感染者と直接コンタクトあったかを把握するためでもあります。
質問2:会社は従業員に対して、どのような対策を取らないといけないですか?
こちらも「安全配慮義務」になります。
常に会社はリーズナブルな安全対策を取り、従業員の安全を保証しないといけないのですが、コロナウイルスの今の異常時に例えばマスクや消毒剤等々を提供する様々な対策が考えられます。これは義務とは簡単に言えないのですが、企業の規模にも業界により義務となることも考えられます。
私の会社では対策としてとりあえず自宅勤務と致しましたが、会社に通う人がいれば消毒剤を置いて、正しい手洗いのマニュアルもトイレの壁に貼ってあります。
質問3:役所に対しての情報提供義務ありますか?
ドイツの感染予防法により感染の疑いがある場合、保健所に報告する義務があります。
しかし報告するのは会社ではなく、感染を確定したお医者さんになります。つまり会社は直接保健所に報告する義務がありませんが連絡を取った方が良いケースもあります。会社には特に不利なことありません。
必要であれば、ロバートコッホ研究所のWebサイトにあるRobert-Koch-Institutのツールで会社の担当保健所を探してみて下さい。
質問4:保健所は強制的に休業の指示を出せますか?
感染者の疑いがあるだけで、感染予防法第16条8項によって保健所は会社を休業とさせることできます。
質問5:保健所の指示によって従業員は自宅待機や隔離になっています。給与の支払い義務ありますか?
まず感染予防法の第56条によって、感染の疑いがある方に対して自宅待機及び隔離の指示を出す権利があります。
その方は個人的に就業不能でなくても一時的に職業禁止となります。最初の6週間通常の病気扱いとなり、会社は支払い義務がありますが、保健所に対する還付請求権が発生します。6週間以上になりますと従業員が直接保健所から支払われます。
この法律は個人に対する措置を想定されたもので、新型コロナウイルスの影響で休業となる場合は、正直どうなるかはっきりした答えがありません。
非常にケースバイケースになりますが、会社に全く責任がない場合は、おそらく保健所に対する上記の還付請求権があることも考えられます。
逆に会社に何かしらの責任(例えば何も対策を取らないなど)がある場合、会社の損となる可能性も高いです。
毎日状況も変わり、こういった状況に合わせた法律や政府からの対策もこれからあるかもしれません。フリーランスの場合その方との契約書によりますが、延期することは基本的に可能です。
ドイツの従業員さん向けQA集
質問1:私感染したかもしれない!または感染者とコンタクトあった!会社に報告しないといけないですか?
会社に報告する義務ありません。
通常の病気で欠席となること、及びいつ出勤できるかを会社に報告しないといけません。ただし、お医者さんによってコロナウイルスの感染が確定、又は疑いがあるだけでもそのお医者さんは保健所に速やかに報告する義務あります。
質問2:会社からの強制帰国や出張の指示に従わないといけないですか?
基本的に従う必要があります。
ただし、強制帰国でも出張でも常に会社は従業員に対しての「安全配慮義務」を考慮し、適切な対応を取らないといけません。
このコロナウイルス感染拡大の状況の中でも、リスクがあるだけで出張を拒否することは簡単にできませんが、ドイツ政府が正式な渡航警告を出している国や地域の出張になると、拒否する権利は考えられます。
今(2020年3月22日現在)は、日本を含め全世界に対しての渡航警告が4月末まで出ていますので、強制帰国や出張を拒否しても現在従業員の方が有利な立場であると考えられます。
質問3:会社に自宅勤務と告げられたが、従わないといけませんか?逆に私から要求してもいいのでしょうか?
基本的に労働契約書で何が合意されたかによります。
ほとんどの契約書にホームオフィス(自宅勤務)についての事項が記載されず、この場合は従業員と会社が合意さえすれば問題ありません。
ただし従業員にホームオフィスの権利はありません。一方会社に雇用主として「指揮命令権」というものがあります。
時と場合により強制的にホームオフィスになることが考えられ、今のコロナウイルス感染拡大の状況では、十分に考えられます。
ただし、ホームオフィスになるとその「ホーム」が会社の一部となり、つまり会社が仕事できる環境を保証しなければなりません。パソコンやオフィスツールなどすべて会社の責任になります。
質問4:バスや電車は動かないから通勤ができません。この場合でも給与はもらえますか?
出社することそしてどうやって通勤するかどうか、すべて従業員のリスクになります。
しかしすでにホームオフィスや色んな対策が設置されており、会社と話し合うのが一番です。
質問5:本職は休業になったので、別の仕事をしてもいいですか?
労働契約書によりますが、基本的に可能です。
しかし会社の承諾が必ず必要ですし、さらに副業を開始するとしても、いつでも本職に通常通り戻れる準備をしないといけません。
質問6:ちょうど今長期休暇中でしたが、休暇を取りやめました。会社での休暇の扱いはどうなりますか?
ちょうど長期休暇を予定しており、コロナウイルスの影響で飛行機やホテルすべての旅行をキャンセルされた場合、休暇自体をキャンセルして、仕事したいと思うかもしれません。
しかしコロナウイルスの影響で会社に対して、「休暇のキャンセル」という権利はありませんので、そのまま予定どおり休暇を取得することになります。
質問7:残業の扱いはどうなりますか?
特にドイツの大手企業などでは、残業を貯めることができます。例えば2時間残業したので、2時間仕事を早く終わらせて次の日は帰るという仕組みです。
人によっては50時間や100時間を貯めている人もいます。
多くに企業は今休業になっているか、休業の寸前という状況です。色んな制限がかけられている生活になり、従業員に仕事がないため、「貯めた残業を使って、会社に来なくて良い」というような指示も出ています。
残業でも休暇でも、会社が一方的に決めることできません。お互い納得しないといけない基本ではありますが、この状況では会社としても従業員としても我慢することは山ほどあります。この会社にとって厳しい状況の中で、いくつかの企業は倒産する方向に向かっています。
職場を失うよりも現在の会社と話し合い、協力することをお勧めします。
質問8:同僚がコロナに感染したかもしれません。職場に行くのが怖いのですが出社しないとだめですか?
こちらは簡単な答えがありません。基本的に怖いだけで出社しないことはできません。ただし、この状況では、いくつかの会社の対策として従業員は自宅勤務などになっています。
コロナウイルス感染の疑いがある場合、又は症状のある場合は出社する義務はありません。この場合まずはお医者さんに診てもらって下さい。
質問9:コロナの影響で会社に解雇されたのは合法ですか?
こういったケースも残念ながら出てます。
解雇保護法が適用になる場合(会社には10人以上の従業員がいる)、簡単に解雇することできません。コロナウイルスの影響で解雇することは基本的に考えられますが、「コロナウイルス」だけを理由にした解雇は無効です。どんな時でも解雇保護法による「正当な理由」が必要です。
会社の経済的な状況は会社のリスクであり、解雇の理由になりません。
つまり、極端に言えば「コロナウイルスの影響で、お金がなくなったから解雇する」ことはできません。こういったコロナの状況で考えられる解雇理由は、事業上の理由による「整理解雇」になります。
正当な理由があっても「社会的選択」というドイツ労働法にあります。この社会的選択は正当な理由があるとしても、解雇される従業員を自由に選ぶことはできないというものです。年齢・勤続年数・扶養義務・障害を考慮する義務があります。
従業員でも会社でも今前代未聞の状況ですので、簡単な行動をとらずに慎重に事を進めましょう。ピンチの会社には、これから政府の様々なサポートがあると明確になっています。
特に「操業短縮(Kurzarbeit)」という仕組みもあり、解雇する前にこちらも確認してほしいです。以下操業短縮については詳しく説明します。
上記FAQにない質問や悩みがある場合、相談料が発生するような心配せずに是非ご連絡下さい。できる限りサポートさせていただきます。
ドイツの操業短縮(Kurzarbeit)について
コロナウイルスのパンデミックによって、多くの企業、そして特に中小企業は休業となってしまい、従業員に給与を支払うのがどんどん難しくなり、最終的に倒産となります。
それを避けるために「Kurzarbeit」、操業短縮という従業員の労働時間をかなりカットする仕組みがあります。
従業員を解雇するより労働時間を短くして、それに伴い給与をカットすることができます。コロナウイルスの対策としてその厳しい条件は簡略されました。カットされた給与分の60%か67%(子供の有無で変わります)は、労働局が補助金を出してくれます。
どうやって申請すればいいの?
申請先はドイツ労働局になります。条件は以下の通りです:
- かなりの休業による損害(極端に言えば仕事がない!)
- 従業員が1人以上在籍
- 従業員は解雇されていない
- 会社はドイツ労働局に申請
操業短縮は一方的に行うことではなく従業員と会社の間の合意に基づいた対策です。ほとんどの労働契約書に、操業短縮についての事項はありませんが簡単な追加の契約書で済みます。
労働局への報告
▼報告書
Anzeige über Arbeitsausfall
労働局への申請
▼申請書
Antrag auf Kurzarbeitergeld (Kug) – Leistungsantrag –
現在ドイツ語の申請書しかありません。例えば以下のような方が操業短縮を申請する場合を見てみましょう。
- 月額給与が4,000ユーロである従業員の給与を75%カットする(つまり1000ユーロに減額する)
- 課税等級1
- お子さんもいる
- 職場は西ドイツ
この場合通常の手取り給料は約2,500ユーロです。75%カットされると手取り給料は800ユーロになります。
その差額である約1,700ユーロの67%(約1,100ユーロ)は補助金で支払われます。この例の場合は子供がいるので67%が補助金となります。従業員は給料が75%カットでも、会社からの給与800ユーロ+補助金の1,100ユーロの、合計約1900ユーロの給料になります。
非常に便利な計算ツールもあります。
2年間さかのぼっての申請も、コロナウイルスの影響で取り急ぎ可能となりました。
毎日の状況変化もあり、こちらは2020年3月22日時点の最新情報のつもりではありますが、質問や不明な場合、是非遠慮なくご連絡下さい。
緊急援助について
ドイツの各州は今緊急援助金も準備しています。3万ユーロまでのただの補助金をいただくことも可能です。企業だけではなく、もちろんフリーランスの方も対象になります。
緊急援助の対象銀行も毎日増えたり、状況が変わっていますのでご注意下さい。情報に困りましたらいつでもご連絡下さい。
Baden-Württemberg(バーデン・ビュルテンベルク)の緊急援助情報
▶https://finanzierungsportal.ermoeglicher.de/
2020年3月29日追記:より詳細な情報を以下の記事で解説しました
Bayern(バイエルン)の緊急援助情報
2020年3月29日追記:より詳細な情報を以下の記事で解説しました
Berlin(ベルリン)の緊急援助情報
▼ベルリン市の案内・情報まとめ
https://www.berlin.de/corona/en/
▼ベルリンの企業向け情報(2020年3月25日追記)
Coronavirus – Informationen für Unternehmen in Berlin(ドイツ語)
▼coronavirus: Help and Support(2020年3月26日追記)
coronavirus: Help and Support(英語)
2020年3月29日追記:より詳細な情報を以下の記事で解説しました
Brandenburg(ブランデンブルク)の緊急援助情報
▼銀行のプレスリリース
https://www.ilb.de/de/presse/pressemitteilungen/archiv-2020/pressemitteilung-2020_1162816.html
2020年3月29日追記:より詳細な情報を以下の記事で解説しました
Bremen(ブレーメン)の緊急援助情報
▼ブレーメンの情報まとめ
https://www.bremen.de/corona
▼メールでの対応
task-force@bab-bremen.de
2020年3月29日追記:より詳細な情報を以下の記事で解説しました
Hamburg(ハンブルク)の緊急援助情報
▼プレスリリース
https://www.hamburg.de/coronavirus/13737132/2020-03-19-bwvi-eckpunkte-schutzschirm/
▼メールでの対応
schutzschirmcorona@fb.hamburg.de
2020年3月29日追記:より詳細な情報を以下の記事で解説しました
Hessen(ヘッセン)の緊急援助情報
https://finanzierungsportal.ermoeglicher.de/
▼電話での対応
0611 1507 77
2020年3月29日追記:より詳細な情報を以下の記事で解説しました
Mecklenburg-Vorpommern(メクレンブルク・フォアポンメルン)の緊急援助情報
▼電話での対応
0385 588 5588
2020年3月29日追記:より詳細な情報を以下の記事で解説しました
Niedersachsen(ニーダーザクセン)の緊急援助情報
NBank
▼電話
0511 30031-33
▼メール
beratung@nbank.de
2020年3月29日追記:より詳細な情報を以下の記事で解説しました
Nordrhein-Westfalen(ノルトライン・ヴェストファーレン)の緊急援助情報
▼経産省の電話対応
0211 61772-555
▼Bürgschaftsbank NRW
https://www.bb-nrw.de/de/aktuelles/news/detail/Corona-Krise-Buergschaftsbanken-erweitern-Unterstuetzung-von-KMU/
▼メール
info@bb-nrw.de
2020年3月29日追記:より詳細な情報を以下の記事で解説しました
Rheinland-Pfalz(ラインラント・プファルツ)の緊急援助情報
https://finanzierungsportal.ermoeglicher.de/
▼経産省のメール対応
unternehmenshilfe-corona@mwvlw.rlp.de
▼経産省の電話対応
06131 16 5110
2020年3月29日追記:より詳細な情報を以下の記事で解説しました
Saarland(ザールラント)の緊急援助情報
▼情報まとめ
https://www.saarland.de/254042.htm
▼経産省の電話対応
(0681) 501-4433
▼メール対応
corona@wirtschaft.saarland.de
2020年3月29日追記:より詳細な情報を以下の記事で解説しました
Sachsen(ザクセン)の緊急援助情報
▼銀行 (Sächsische Aufbaubank)の電話対応
0351 4910 1100
オンライン申請書は3月23日からアクセス可能
2020年3月29日追記:より詳細な情報を以下の記事で解説しました
Sachsen-Anhalt(ザクセン・アンハルト)の緊急援助情報
https://finanzierungsportal.ermoeglicher.de/
▼Investitionsbank Sachsen-Anhaltのローン申請書
https://www.ib-sachsen-anhalt.de/fileadmin/user_upload/Dokumente/Wirtschaft/Corona_Stundungsantrag.pdf
2020年3月29日追記:より詳細な情報を以下の記事で解説しました
Schleswig-Holstein(シュレスヴィヒ・ホルシュタイン)の緊急援助情報
▼Investitionsbank Schleswig-Holsteinのメール対応
info@ib-sh.de
2020年3月29日追記:より詳細な情報を以下の記事で解説しました
Thüringen(テューリンゲン)の緊急援助情報
3月23日からオンライン申請可能
2020年3月29日追記:より詳細な情報を以下の記事で解説しました